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 1.金融危機下の景気対策
 (1) 第1次景気対策 「成長促進による雇用の確保」 (2008年11月5日)
ドイツ政府は2008年11月5日、金融危機の世界的拡大に伴う国内経済への影響に備えた景気対策を決定しました(第1次景気対策)。ドイツ政府はこれによって、2009年から2010年までの3年間で企業、一般家庭および市町村による総額500億ユーロの投資および調達を促進するほか、、企業の資金調達および流動性の確保のための措置により200億ユーロあまりの投資資金の調達が保証されるとしています。
また、労働時間短縮の対象となった労働者への時短手当ての支給期間を18ヵ月へ延長することをいち早く決定したことは、雇用不安を回避し、消費を維持する上で大きな効果を挙げているようです。
 第1次景気対策の具体的内容
エネルギー節約のための建物の改修、エネルギー効率の高い建物の建設の促進
内容:
建物のエネルギー効率向上のための投資を促進するため、「CO2建築物改修プログラム」等のための資金を2009年から2011までの3年間について合計30億ユーロ増額する。
目的:
この措置により、エネルギー効率の高い建物の建設や改修を促進し、成長と雇用に対して直接の刺激を与える。
備考:
エネルギー効率向上のための建築物改修プログラムに沿って、2009年のKfW(復興金融公庫)融資枠を26億ユーロ拡大する。
さらに「中小企業エネルギー効率向上特別基金(Sonderfonds Energieeffizienz in KMU)を拡大する。
これにより、KfWの融資枠を全体でさらに3億ユーロ拡大する。低利の融資によって、特に中小企業の具体的なエネルギー節約投資を促進する。
実施:
すでに実績を挙げているKfWのプログラム枠が拡大されるもので、引き続きいつでも申請が可能である。

KfW(復興金融公庫)の市町村向けインフラ・プログラムの拡充
内容:
重要なインフラ改善事業について、投資を順調に進めるため、構造改善の遅れた市町村のためのKfWインフラ・プログラムの枠を30億ユーロ拡大する。この融資には、期間を限定して、特に低率の金利を適用する。
連邦政府は各州政府に対して、市町村を監督するに際して、資金力の乏しい市町村もこのプログラムを活用できるよう配慮を求める。
目的:
インフラに関するこの特別措置により、連邦政府として市町村による投資の早期実施、特にすでに計画されているプロジェクトの停滞を解消するための誘因を与える。
実行:
申請の受付は2008年12月から行い、コミットメントは早ければ2009年1月1日以降にも行う。連邦政府は各州に対して財政力の弱い市町村もこの措置を活用できるよう配慮を求める。

手工業者労賃の経費算入限度額の拡大
内容:
建物の維持、改善に際して、手工業者に支払う労賃を経費算入する際の限度額を引き上げ、2009年1月1日から租税ボーナスをこれまでの2倍にあたる6,000ユーロの20%(1,200ユーロ)とする。
この措置については実施2年後に実効性を改めて評価する
目的:
この措置によって、手工業者の受注の増加および受注の安定を図る。また、闇労働への誘因を弱め、一般家庭の家計の負担を軽減する。
備考:
建物の維持、改善のために手工業者に支払う労賃について経費算入枠を拡大し、税ボーナスを600ユーロから1,200ユーロに倍増する。したがって、2009年からは労賃6,000ユーロ(材料費などを含まない)の20%を経費算入できる。期限は設けないが、2年後に見直しを行う。
連邦経済省は当初から手工業を税制面で促進することを主張してきたが、今回これが実現。
この措置により一般家庭の負担は全体で年間15億ユーロ軽減される。一方、手工業者の売り上げは2%増に相当する100億ユーロの増加となる。
実施:
景気対策パッケージ「成長促進による雇用確保」の租税措置の実施のための法律の枠内で実行する。

中小企業のための特別償却制度
内容
中小企業については定率法減価償却(degresive Abschreibung)に加えて、2年間の期限で特別償却をを認める。(対象となる事業所資産および利益の上限を33万5,000ユーロ、17万5,000ユーロないし20万ユーロに引き上げることによる。)
目的:
中小企業の流動性と自己資本形成を支援し、もって投資および技術革新力の強化を支援する。
備考:
2008年企業税制改革において、投資控除額(Investitionabzugsbetraege)(以前の貯蓄償却)および中小企業の特別償却に関する税制上の規定が改正された。それとの関係で、中小企業の特別償却についても条件が緩和された。
今回の措置で、特別償却の利用範囲がさらに引き上げられ、これまで以上に多くの企業が恩恵に浴することになった。バランスシートを作成する(bilanzierende)企業の場合は基準となる事業資産の限度は10万ユーロ引き上げて33万、5000ユーロとなる。バランスシートを作成しない企業(いわゆる収入-黒字-計算企業)の場合は利益が基準となる。その限度はやはり10万ユーロ引き上げて20万ユーロとする。
この措置により、企業の負担は年間約1億ユーロ軽減される。農林業については経済価値ないしは代替経済価値が5万ユーロ増額されて17万5,000ユーロとなる。
当該財が購入ないしは製造された年については償却率を20%とすることができる。20%を5年間に分割することもできる。
この特別償却は平行して導入されている定率法(degressive Abschreibung=低減法)償却に加えることができ、したがって、最初の年は45%までの償却が可能となる。
この措置は2009年および2010年の2年間に限られる。

KfW(復興金融公庫)融資枠の150億ユーロ拡大
内容:
金融業界に隘路が生じている中で、産業界、特に中小企業に対する信用供給を確保するため、KfWに2009年末までの期限で150億ユーロの追加的融資枠(Finanzierungsinstrument)を設け、民間金融機関による融資の強化を図る。この関連で、KfWによる90%までの責任引き受けおよび経営資金調達については50%までの引き受けを予定する。
目的:
この追加的融資枠は企業の投資および中・長期的経営資金の確保に寄与するものである。
備考:
過半を個人が所有する企業でグループの売り上げが原則5億ユーロ以下の企業を対象とする。
実施:
申請は12月1日から取引銀行で受け付けている。
この事業についてはEU委員会も関与する。最初のコミットメントは2009年1月1日以降の見込み。

設備資産のうちの動産に対する25%の定率(逓減)減価償却
内容:
連邦政府は2009年1月1日から2年間の期限で、設備資産の中の動産について25%の定率償却制度を導入した。(「中小企業に対する特別償却制度」を参照のこと)
目的:
市場をめぐる不安から企業は投資を抑制する可能性がある。これに対して、設備資産の動産に対する定率(逓減)減価償却制度を再び導入することで投資の誘因とし、安定した成長を図る。
備考:
企業は所得税法第7g条第5項による特別償却に加えて定率償却も行うことができる。(「中小企業のための特別償却制度」参照。)定率減価償却の特徴は、最初の年の償却額が最も大きく、年を追うごとに小さくなっていくことである。したがって、企業にとっては動産を取得した最初の年の業績が特に縮小することになり、税負担が大幅に軽減されるので、2009年から2010年の間に投資を行うのが有利となる。
定率法を利用できる期間は2009年1月1日から2年間である。償却率は最大25%である。
この措置の恩恵を受けるのは多くの中小企業をはじめとするすべての企業である。企業の負担は全体で25億ユーロ軽減される。

職業斡旋所1,000ヵ所の増設
内容:
労働エージェンシーの職業安定所を1,000ヵ所増設することにより、解雇を事前通告された従業員(in Kuendigungsphase=実際の解雇はまだの状態)のための職業斡旋を強化する。(Job-to-Job斡旋)
目的:
失業状態に入る前のできるだけ早い時期に次の職場の斡旋に向けた面談ができるようにする。それによって、間隔をあけずに次の職場へ移るチャンスが大幅に改善する。また、世界的金融危機によってドイツの失業率が急速に拡大するのを回避する。
備考:
斡旋所の設置は2012年12月31までの期間に限定して行なう。
実施:
斡旋所の設置のための費用は連邦労働エージェンシーの予算に組み込み済み。政府の承認は今後。

乗用車新車に対する自動車税の免除
内容:
自動車税制改正までの買い控えを解消するため、本措置に関する法案の閣議決定の日以降に新規登録される乗用車について自動車税を1年間免除する。Euro-5およびEuro-6を満たす乗用車については登録後最大2年間自動車税を免除する。自動車税の免除はいずれの場合も2010年12月31日で終了する。同時に、連邦政府は自動車税体系をCO2排出量を基準にしたものに速やかに変更するとともに、自動車税を連邦税に移行させることとする。
目的:
自動車税制改革との関係で、自動車購入者に対して新制度下でも現行制度より不利にはならないことを示すことにより、特に自動車税改革の議論が始まって以来生じている自動車の買い控え傾向に対処する。さらに、新車購入に際して自動車税を徴収しないことで新車の購入を促す。EU排ガス規制にしたがって減免の度合いに差をつけることによって、有害物質の排出削減にも寄与する。
備考:
2008年11月5日から2009年6月30日までに新車を登録した所有者には1年間自動車税を免除する。
当該乗用車がEuro-5ないしEuro-6の基準を満たせば免除期間は最大2年間に延長される。ただし、免除される期間はいずれの場合も2010年12月31日で終了することに注意。
さらに、有害物資の排出量が特に少ない乗用車をすでに所有する者も2009年1月1日から1年間自動車税を免除される。ただし、当該車両は新車登録の日からEuro-5の認定を得ていなければならない。
自動車税の免除は同一車両について一度しか適用されず、免除期間が満了しなくても2010年12月31日で終了する。
免税は車両に対して期間を限って適用されるもので、所有者が替わった場合は残りの期間は新しい所有者に移る。途中で使用を中断した場合や期間限定登録をした場合も免除期間は延長しない。
後日国内で使用するために赤いナンバープレートを取得した場合は免除の対象とならない。
また、今後数ヵ月内に新車を購入する者が、自動車税体系の変更後も現行制度によるよりも不利にならないようにすることが定められている。燃料消費量すなわちCO2排出量が特に少ない乗用車については自動車税の設定にあたって所有者にとってより有利な規定が適用される。

労働時間短縮(時短)手当て支給期間の延長
内容:
労働時間短縮手当て(時短手当て)の支給期間を今後1年間に限ってこれまでの12ヵ月から18ヵ月に延長する。時短を従業員の再訓練に利用することができることとする。
目的:
企業および従業員が景気後退による受注の減少局面を乗り越えることができるようにするとともに、解雇を回避する。失業保険への負担は生じない。企業は訓練した従業員を維持することができる。時短は従業員の再訓練に積極的に活用することができるものとする。
備考:
企業は少なくとも3分の1の従業員について労働時間が削減され、それらの従業員の1ヵ月あたりの賃金が少なくとも10%削減される場合、連邦労働エージェンシーに時短手当てを申請することができる。時短手当ては1ヵ月あたりの賃金の60%ないし67%で、削減された時間に比例して支払われる。
法律では支給期間は6ヵ月に限定されている。その後、3ヵ月の停止期間(Sperrfrist)がある。支給期間は(Regelbezugsdauer) は経済全体に大きな問題がある場合(aussergewoehnliche Umstaenden)は政令によって24ヵ月まで延長することができると定められている。
実施:
法律上の支給期間を政令によって18ヵ月に延長する。政令は2008年11月12日の閣議で決定された。
新しい政令は2009年1月1日から1年の期限で実施され、受給資格が2009年12月31日までに生じたすべての従業員に適用される。

地域経済構造改善のための共同事業の拡充
内容:
「地域経済構造改善のための(連邦と州の)共同事業(Gemeinschaftsaufgabe Verbesserun der regionalen Wirtschaftstruktur=GRW)」の資金を2009年1月1日から拡充する。このため、連邦は各州に対して2009年の特別プログラムとして2億ユーロを提供する。うち、1億ユーロは2009年分として現金で提供し、1億ユーロは後年負担する債務枠(Verpflichtungsermaechtigung)として提供する。
目的:
構造改善の遅れた地域における投資を促進し、成長力の向上を図る。
備考:
「地域経済構造改善のための共同事業」は特に市町村における企業投資および経済に密接したインフラ投資を対象とするものである。
事業のための資金は連邦と州が各半分ずつ負担する。
対象は構造改善の遅れた地域に限られる。
実施:
この特別プログラムの設定については2008年12月8日、連邦(経済省および財政省)および16州(経済大臣)GRW調整委員会において決定された。特別プログラムのための資金は地域構造改善のための共同事業(GRW)資金の通常の配分比率とは異なり、旧連邦州と新連邦州に半分ずつ配分される。特別プログラムは2009年1月1日に発動する。
実行に伝は通常の規則が適用される。

高齢者および未熟練労働者に対する特別プログラム(WeGebAU)の拡充
内容:
高齢者および未熟練労働者に対する特別プログラム(WeGebAU)を広範に拡充し、実地での技術習得によって解雇を回避するとともに、熟練労働者不足への対処を図る。
目的:
WeGebAUプログラムは職業再訓練に対する企業および従業員の関心を喚起し、参加を促すとともに、高齢者や未熟練労働者が熟練不足によって解雇されるのを回避し、就業の機会や雇用条件の改善に資するのが目的である。
賃金コスト補助は、雇用主が未熟練労働者および非熟練労働者の雇用を続けるのを支援するものである。未熟練労働者および非熟練労働者はこれによって熟練度の向上を図ることや、資格取得に再挑戦することができる。高齢者はさらに雇用主から引き続き報酬を受けつつ、職業再訓練に参加するための時間が与えられる場合は、職業再訓練のための補助を受けることができる。
備考:
連邦労働エージェンシーは2006年からWeGebAUプログラムにより従業員数250人以下の企業を対象に、非熟練労働者、未熟練労働者および高齢者の事業所内職業再訓練を促進している。
非熟練労働者、未熟練労働者の再教育の促進については、今後は従業員250人以上の企業の場合も社会法典III第235c条の条件を満たせば労働コスト補助(AEZ)を受けることを排除しない。雇用主は非熟練ないし未熟練従業員の賃金を職業再訓練中も支給する場合、一定の条件のもとで労働エージェンシーから補助を受けることができる。
高齢者は労働エージェンシーにより補助の対象となると認められた再教育プログラムに参加する場合、雇用主から資格取得までの期間、労働を免除され、かつ、給与を引き続き支給されるなどの条件を満たせば補助を受けることができる。(教育課程コスト、場合によっては交通費ないしは必要となる外部講習受講費に対する補助。)
実行:
労働エージェンシーの予算に組み込み済み。

交通分野の投資促進
内容:
緊急を要する交通投資を速やかに実行する。そのため、2009年および2010年の「交通部門の改革・投資プログラム」の予算をそれぞれ20億ユーロ増額する。
目的:
この措置により交通インフラの隘路を排除する。その際、鉄道および長距離国道(Bundesfernstrassen)および国有水路を重点とする。また、新連邦州内の長距離国道の維持・改修の停滞を解消する。
これによって、渋滞のコストを回避し、一般国民、経済、資源および環境に対する負担を軽減する。また、建設業界の受注状態を中長期的に改善する効果もあり、工事を実施する中小の建設企業にも裨益するものである。
実施:
実行の担当は連邦交通・建設・都市開発省。
国会の決定による交通施設のごとの資金配分は次のとおり。
遠距離国道:9億5,000万ユーロ(うち、2009年は5億5,000万ユーロ)
国有水路:4億3,000万ユーロ(うち、2009年は2億8,000万ユーロ)
鉄道:6億2,000万ユーロ(うち、2009年は1億7,000万ユーロ)

イノベーションの促進
(ERP=欧州復興基金イノベーションプログラム、ERP起業基金、エネルギー効率特別基金)
内容:
困難な時期においてもイノベーションとエネルギー効率の向上全般を支援するため、KfW(復興金融公庫)はイノベーションの促進と実現を大幅に強化する。同時に、KfWは資本参加のための提供資金を大幅に増額し、若い、革新力のある企業家がつなぎ融資(Anschlussfinanzierung)をさらに受けやすくする。
目的:
この措置により、イノベーションへのいっそうの投資を促す。
技術革新のための資金調達の分野では、従来の資金提供をさらに改善し、新たな道を開く。そのため、中小企業が革新的アイデアを製品化する際のERPイノベーションプログラムを拡充する。さらに、エネルギー分野では特別の資金提供により、研究成果をたとえば、化石燃料による革新的な発電技術や太陽光による発電や熱供給など「灯台プロジェクト=中核プロジェクト」の形で実現に移すものとする。
ERP起業基金による、若い、革新的な企業に対する参加資本の提供を充実させ、必要なつなぎ資金の確保に重点的に活用する。若い、革新的な起業はリスク資本に依存しておりそれだけ金融市場の危機の影響を受けやすい。
今年(2008年)から始まった、中小企業のエネルギー効率向上支援プログラムを拡充する。これは、エネルギーに関する相談事業や低利融資の提供によってエネルギーの合理的利用のための対策を促進するものである。
ERPイノベーションプログラム、ERP起業基金およびエネルギー効率化プログラムについては既存のプログラム枠の拡大となるので、申請は直ちに行なうことができる。

以上

出所:ドイツ連邦経済・技術省
   
 
   -- ドレスデン情報ファイル 2008.03.04--