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ドレスデン情報ファイル

ドイツの環境・エネルギー政策

温室効果ガス排出量 削減目標と推移

目 標
 ドイツは温室効果ガス削減目標を法律によって定めている。その法律は2021年の「気候保護法」で、1990年を基準に2030年までに少なくとも65%減、2040年までに少なくとも88%減、2045年までに温室効果ガスニュートラル(プラス・マイナスゼロ)を達成することをめざしている。

 政府がはじめて具体的な目標値を設定したのは2010年のエネルギーコンセプトで、温室効果ガスの排出量を1990年比で2020年までに少なくとも40%、2030年までに同55%、2040年までに同70%削減し、2050年までに80%~95%削減することを目標としていた。

 その後、パリ協定の発効など世界的な気候保護の機運の高まりを背景に、削減目標を引き上げ、2021年の改正気候保護法(2021年6月24日連邦議会通過)で、分野別にも具体的な削減目標を設定している。     

図 ドイツと日本の温室効果ガス排出量の推移と削減目標
(単位:100万トン/CO2換算)

  ドイツと日本の温室効果ガス排出量の推移と削減目標  

注1)日本は年度。ドイツは暦年(2022年は暫定値)。
注2)2030年のドイツの目標は1990年比で65%減。日本の目標は2013年度比で46%減、1990年比では40%減。
データ出所:以下のデータとドレスデン情報ファイルによる計算。
 ドイツ:連邦環境庁"Nationale Treibhausgas-Inventare 1990 bis 2021 (Stand 03/2023)"および「2021年改正気候保護法」
 日 本:国立環境研究所「日本のの温室効果ガス排出量データ(1990~2020年度}、(目標値は政府:環境省)


推 移

 京都議定書の目標までは順調に達成したが、その後は削減がほとんど進まず、目標からの乖離が拡大した。その主な要因は経済が順調に成長しtこと、年間30万~40万人に及ぶ移民の流入があったこと、自動車の大型化が進んだことなどであった。
 
そのため、2018年には2020年の目標達成を実質的に断念し、態勢を立て直して2030年までの目標達成に集中することとした。

 その後は再生可能エネルギーが設備能力の拡大や天候に恵まれて大幅な増加をたどり、一方で景気が鎮静化したこともあって、CO2排出量は大幅な減少に転じた。
 
 さらに、2020年はパンデミックによる経済活動の低下でエネルギー・電力需要が大幅に減少したことから、結果的に当初からの目標である1990年比40%減を上回る40.8%の削減が達成された。

 2021年には経済の回復とともに排出量が増加した。2022年にはウクライナ戦争を背景にロシアからの天然ガス供給が停止し、石炭火力による代替などが行われたが、エネルギー価格の急騰を背景に消費が減少したことから、排出量はやや減少した。しかし、削減幅は目標を下回っており、改善が急がれている。


対 策
 温室効果ガスの排出量削減を目的とするさまざまな施策が広範囲にわたって実施されている。主な例としては次のようなものが挙げられる。

●再生可能エネルギーの拡大
  再生可能エネルギーによる電力の優先的引き取り、送電、配電
  屋根上太陽光発電の設置義務
   (住宅、事業用建物、新築、改修など州によって相違)
●電力、鉄鋼等エネルギー多消費産業を対象とする排出権取引制度
●暖房用燃料および自動車用燃料に対するCO2課税
●脱石炭(石炭および褐炭。2038年、一部は2030年までに達成。)
●ヒートポンプ式など省エネルギー型暖房設備の設置義務・補助(予定)
●省エネルギー型住宅への改修・新築に対する補助
●電気自動車の購入に対する補助
●鉄道利用の促進(49ユーロ・チケット)

     

参考:ドイツの日本の人口一人あたりの温室効果ガス排出量
(単位:トン/年) 
ドイツと日本の一人あたりの温室効果ガス排出量の推移
出所:CLIMATEWATCH, "Historical GHG Emmissions"


更新:2021.02.06、2021.03.16、2021.06.24
改訂:2023.06.28