| ドイツのエネルギー関係データ | 
          
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            | ドイツのエネルギー資源 - 自給率、輸入依存度、輸入先 | 
          
            | ドイツの2020年のエネルギー自給率は原子力をゼロとしても約29%で、比較的高い。
 一次エネルギー消費の9%を占める褐炭および16%余りを占める再生可能エネルギーがほぼ100%国内産であるほか、石油や天然ガスも多くはないが国内産がある。
 
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            | 注)グラフ上部の数字は国内消費量(国内産+純輸入量)。下は国内消費量に占める国内産の割合。 出所:エネルギーバランス作業協会(AGEB)、Auswertungstabellen zur Energiebilanz Deutschland、 1990
            bis 2020、Stand: Sep. 2021(暫定値)を基に当サイトで算出。
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            | 石炭 ドイツの石炭はノルトライン・ヴェストファーレン州北部のルール地方およびドイツ西部のザールラント州で産出し、最盛期には採掘量が1億5,000万トンに及び、鉄鋼生産、発電などドイツ産業の発展を支えた。しかし、坑道がますます深くなるに伴って採炭コストが上昇し、輸入炭との競争で不利な状況に置かれるようになった。このため、輸入を制限するとともに、石炭発電法を制定して国内炭の利用を促すとともに、雇用の維持を目的に採炭補助が行われてきた。しかし、しかし、経済的負担は高まるばかりで、合理性を欠くようになり、80年代初めから採掘の削減策がとられた。産炭補助は2018年末をもって打ち切られ、それに伴って採掘が終了した。したがって、現在は全量を輸入している。
 2020年に脱石炭法が成立し、石炭火力発電は遅くとも2038年には廃止される。消費量の減少に伴って2020年の輸入量は2014年比で40%あまり減少したが、旧ソ連圏からの輸入量はほぼ変わらず、シェアが大幅に拡大した。
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            | 注)*石炭、石炭ブリケットおよびコークス 出所:連邦経済・エネルギー省、Zahlen und Fakten Energiedaten
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            | 褐炭  ドイツにおける2015年の褐炭
 産出量は約1億7,800万トン
 で、中国を上回り、世界第1位である。
 産出量の約90%が国内の発電および地域暖房に消費される。それ以外は産業内自家消費およびブリケットに加工して販売される。
 産炭地はポーランド国境に近いラウジッツ地方、中部のヘルムシュテート周辺および西部のノルトライン・ヴェストファーレン州で、いずれも広大な地域に広がる露天掘りで採掘される。巨大な掘削機で採掘された褐炭はそのまま近接する大型発電所に送られ、微粉化されて高効率の発電がおこなわれる。
 褐炭による発電量は1,550億KWhで、全体の約23%を占める(2015年)。CO2排出量が多いこともあって、削減される方向にある。
 (写真は東部ラウジッツ地方の褐炭露天掘り。左後方にボクスベルク褐炭発電所)
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            | 原油 
 2019年の国内の産出量は約193万トンで、国内消費量の2%余りを占める。北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、ニーダーザクセン州などで産出し、一部は北海の沖合で採掘されている。
 2019年の原油輸入量は約8,587万トン。最大の輸入相手国はロシアで31.5%、次いで、英国(11.9%)、ノルウェー(11.3%)、など。
 中東諸国の割合は全体で5.4%にとどまる。その中ではイラクが最大で、3.1%を占める。
 輸入量は全体として減少傾向にあり、2015年の約9,128と比べると2019年は約6%減少した。
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            | 注) 中近東はイラク(3.1%)、サウジアラビア(1.2%) 出所:連邦経済・エネルギー省、Zahlen und Fakten Energiedaten (2022年1月20日版)
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            | 天然ガス 
 2020年の国内の産出量は57億立方メートルで減少傾向をたどっている。主に産出するのは北部のニーダーザクセン州の西部で、中部のチューリンゲン地方でも産出する。採掘方法によっては増産の可能性もあるが、フラッキングは認められていない。
 輸入先はロシア、ノルウェー、オランダなどで、ほとんどすべて陸上のパイプラインを経由して行われており、液化ガス(LNG) の輸入は僅かである。
 ショルツ首相は2022年2月27日、ロシア・ウクライナ問題を背景に急きょ液化天然ガス受入設備の建設を推進する計画を発表した。
 
 輸出入の動向
 
 公式統計では2016年以降総輸入量のみ公表されており、、国別の輸入数量、割合等は明らかにされていない。
 2020年の総輸入量は53億5,426万PJで、2015年の42億8,336万PJに対して約25%増加している。
 
 各種市場情報の専門機関であるStatista社は2020年の国別輸入割合はロシア:55.2%、ノルウェー:30.6%、オランダ:12.7%、その他:1.6%としており、従来と比較してロシアからの輸入の割合が大幅に増加している。
 
 なお、ドイツはヨーロッパにおける天然ガスの中継基地になっており、輸入の半分近くは周辺国へ再び輸出されている(下段「天然ガスの需給」参照)。
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            | データ出所: BP/Statista社 | 
          
            | 天然ガスの需給 
 ① エネルギーバランス作業協会(AGEB)によると,2020年の天然ガスの輸入量は5,474PJ(ペタジュール)である。ロシアからのの輸入は上記のStatistaの割合(55.2%)で配分すると3,038PJ、その他の国2,436PJとなる。
 ② ドイツからの輸出量は2,683PJで、輸入の半分近い量が輸出されていることになる。、
 ③ 輸入から輸出を差し引いた純輸入量は2,791PJである。
 ④ 純輸入量に国内産出量の175PJを加えると、2.966PJで、これがみかけ上の国内消費量となる。
 ⑥ これに対して、AGEBが算出した国内消費量は3,147PJで、見かけ上の消費量を181PJ上回っているので、これを備蓄の取り崩しとみなす。(BAFA=経済・輸出管理庁によると、2020年は227PJの備蓄取り崩しがあった。備蓄の積み増し量は不明。)
 、
 下の図は以上に基づいて作成したものである。
 これによれば、仮にロシアからの輸入が止まってもオランダやノルウェーなどからの輸入で国内需要が相当程度まかなえるこ計算になる。
 しかし、ドイツはガスについてもヨーロッパの中の中継地になっており、一旦ドイツに入っロシアのガスもオランダ等のガスも再び周辺国へ輸出されており、それぞれの割合は把握することができない。したがって、ロシアのガスに対するドイツの依存度を正確に把握することができない。
 
 なお、ドイツの2020年のエネルギー消費に占める天然ガスの割合は26.4%である。その約半分がロシア産が占めるとすると、ロシアへの依存度はやはり大きいといえる。
 
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            | 出所:エネルギーバランス作業委員会(AGEB)、 Auswertungstabellen zur Energiebilanz 1990
            bis 2020 (datenstand September 2021)に基づき、BP/Destatista社およびBAFAのデータを加味して当サイトで作成。 | 
          
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            | ● ロシアからのエネルギー資源輸入をめぐるドイツの最近の動向 ● 
 2022.02.22
 ロシアによる「人民共和国」承認に対して、ドイツ政府がNordstream 2の稼働を認可しないことを決定。
 
 2022.02.27
 ショルツ首相
 ①国内2カ所にLNGターミナルを新設。(現在はゼロ。)
 国による補助も検討。
 候補地:Brunsbüttel, Stade, Wilhelmshafen
 ②ガス20億㎥を国の保証により長期オプションで調達。
 ③ガスをEU共同により世界市場で調達。
 ④国民のエネルギーコスト負担の軽減策を検討中。
 ハ―ベック経済相
 ①LNG設備は将来的に水素に転用可能なものを検討する。
 ②石炭およびガスにも国家備蓄を検討する。
 
 2022.02.28
 ハ―ベック経済相
 「この冬はロシアのガスがなくても供給は確保できる。次の冬は備蓄で対処できる。」
 
 2022.03.07
 民間企業によるブルンスビュッテルLNGセンターの設立に政府が復興金融公庫を通じて50%の参加を決定。
 
 2022.03.08
 ①ロシアがはじめてNordstream 1を通じたガスの供給停止を警告。「ドイツによる
 Nordstream 2の稼働不認可に対する対抗措置」。
 ②ヨーロッパによるロシアのガスの輸入禁止措置についても警告。
 ショルツ首相
 「ロシアからのガス輸入を早急に放棄することはできない。」「ロシアからのエネルギーはEU諸国の国民の生活にエッセンシャル。エネルギー供給は制裁にから意識的に除外した。」、「EUとも代替策を検討しているが、早急な解決は困難。」
 ③ドイツ学術会議(Leopoldina)が、「ロシアがガス供給を突然停止しても、ドイツは対応可能」と声明。冬には供給不足が生じるが、一連の措置を講じることで悪影響を一定限度に抑え、社会面の影響を和らげることができる。」との見解を発表。
 
 2022.03.20
 ハ―ベック経済・気候保護大臣がカタールを訪問、同国との間で天然ガス、水素、エネルギー効率などを含むエネルギー・パートナシップの形成で合意。企業5社の代表が同行。
 
 2022.03.21
 ハ―ベック経済・気候保護大臣が水素研究などエネルギー面の協力強化のため、アブダビを訪問。
 同行した電力大手RWEはAbu Dhabi National Oil Company (ADNOC)との間で水素およびアンモニアなど水素誘導体の製造と輸入の可能性を検討する基本協定を結んだ。
 ドイツ環境相省が年内にアブダビから水素の輸入が開始される可能性もあるとの見解を表明。
 
 2022.03.25
 ハ―ベック経済相が対ロシア・エネルギー輸入の動向などを発表
 エネルギーの対ロシア依存度が予想したよりも急速に進んでいる。
 原油の輸入に占めるロシアのシェアはウクライナ侵攻から1か月で35%から25%に低下し、さらに夏までに半分に削減できる可能性がある。
 石炭の輸入に占めるロシアのシェアはこれまでの50%から半分の25%に減少しており、秋までにゼロにすることが可能。
 ガスについてはロシアのシェアはこれまでの55%から40%に減少しているが、若干の例外を除けば2024年前半までに輸入をなくすことが可能。
 ロシアがガスの輸入代金をルーブルで支払うよう要求していることに対して西側がどのように対応するかが問題。
 
 なお、ガスについてはノルウェーが供給を増やす意向であるほか、バイデン大統領がヨーロッパ向けに今年中に150億立米、将来的には500億㎥供給するとしており、その場合対ロシア輸入の3分の1が代替できる。
 
 2022.04.06
 世論調査機関Forsaの調査によると、
 供給不足と大幅な価格上昇につながってもロシアのガスを放棄してよいと回答したのは43%。(緑の党の支持者に限ると70%、)
 ロシアのガスを完全に放棄すべきではないと回答したのは50%。
 今年末に予定されている原子力発電所3基の停止を見直すべきとしたのは67%。
 予定どおり停止すべきとしたのは30%。
 (Die Welt紙、2022.04.06)
 
 2022.04.13
 世論調査機関Allensbacher Inatitutの調査
 「ロシアからの石油・ガスの輸入を続けて、ロシアの戦費を間接的にでも負担するのは許せない。直ちに輸入をストップすべき。」
 そう思う:30%
 「問題なのは間違いないが、供給不足や価格上昇を招かずにロシアの石油やガスにすぐに代替できるものはない。当面はロシアから買わざるを得ない。」
 そう思う: 57%
 「原子力発電の稼働期間は延長すべき」: 57%
 「原子力発電は予定どおり今年末で停止する」: 25%
 (Frankfurter Allgemeine紙。2022.04.13)
 
 2022.04.13
 主要経済研究所が春の共同経済動向鑑定書を公表、ロシアからの天然ガス輸入を直ちに停止した場合の経済成長率や物価上昇率などを予測。
 2022年の経済成長率はこのままなら2.7%。ロシアからのガス輸入を直ちに停止した場合は1.9%。
 
 
 
 
                
                  | シナリオ | 項目 | 2022年 | 2023年 |  
                  | ベース・シナリオ | 経済成長率 | 2.7% | 1.9% |  
  | インフレ率 | 6.1% | 2.8% |  
                  | 対ロ・ガス即禁輸のシナリオ | 経済成長率 | 1.9% | 2.3% |  
  | インフレ率 | 7.3% | 5.0% |  
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