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    ザクセン州の半導体産業
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東ドイツ時代に半導体開発と電気・電子産業の拠点であったドレスデンとその周辺地域には東西ドイツの統合後、内外の半導体・電子・情報関係企業が多数進出し、その発展ぶりは旧東ドイツ地域の経済発展の見本といわれた。
しかしながら、2000年代後半の半導体不況の影響を大きく受け、これらの企業の多くは再編や縮小を余儀なくされた。
近年は新たな体制整えて、改めてドイツ先端産業の一翼を担っている。

旧東独時代も半導体開発と電子産業の中心

ドレスデンに半導体産業の基盤ができたのは、第2次対戦後に核開発のためにソ連へ送られていた著名な物理学者ヴェルナー・ハルトマン(Werner Hartmann)博士が1955年に旧東ドイツへ戻り、その下に1961年、電子物理研究所(AME=Arbeitsstelle Melekularelektronik)が設置されたことに始まる。
当時、東ドイツ政府は戦略的な外貨獲得産業として電子・半導体産業を重視し、その育成を図っていた。そのため、一時は他の産業が停滞するほど集中的に資金が投入され、活発な研究開発が行なわれた。
そうした中で、ハルトマン博士が率いるAMEは東ドイツにおける半導体研究開発をリードし、1988年にはAMEのの後継機関であるZMD (Zentrum Mikroelektronik Dresdenが東ドイツではじめて1メガバイトの半導体の試作に成功した。
しかしながら、西側では企業間の激しい競争を通じて急速な開発が進んだのに対して、ココム規制により海外から情報さえ十分に入ってこない東ドイツでは半導体産業の遅れは覆うべくもなく、ハルトマン博士は1974年、開発を意図的に遅らせたなどの疑いをかけられ、追放されしまうような状況であった。
東ドイツにおける半導体製造はコスト、生産性の面で結局は競争力を発揮するには至らなかった


が、研究開発を支えたZMDは東西ドイツの統合後、半導体ソルーションを提供するZMDI AGとして引き続き活動を展開している。

電子関連の企業活動としては1965年にザクセン地方の電子関係企業が企業連合を形成して大型電算機゛robotron 300゛を製作、これらの企業が1969年 4月1日にはドレスデンの北郊ラーデベルクのRafena社を中心とするコンビナート(企業集団)ロボトロン(VEB Kombinat Robotron)へと発展した。
その後、同コンビナートの中心が次第にドレスデンに移される一方、工場はザクセン州北部のホイヤースヴェルダ、リーサなど各地に置かれ、エアフルトのミクロエレクトロニク、イェーナのカール・ツァイスなどの企業、ドレスデン工科大学など研究開発機関との協力の下で、電算機、計測器、通信機、プリンター、ソフトウエアなどの製造を行い、東ドイツで独占的な地位を占め、製品は東欧各国にも輸出されたた。
ロボトロンは1989年の東西ドイツ統合の時点では東ドイツの全コンビナートの中で最大の規模に成長しており、全体で7万人の従業員を擁していたといわれる。東西ドイツの統合後にいくつかの部門が専門企業として再建、継続されている。
欧州の半導体開発・製造の拠点へ

旧東独の半導体産業は西側に大幅な遅れをとっていたが、ドレスデンでは上記のような歴史を背景に、将来も有望な半導体・電子産業のための優れた人的資源や研究基盤を備えており、投資コストも有利であったことから、東西ドイツの統合後は西側から多数の半導体関連企業が進出した。

ドレスデンに最初に進出したのはシーメンス社で、1994年にマイクロエレクトロニクス・センターを設立するとともに、大規模な半導体製造工場の建設を決定した。同社は1999年4月、半導体製造部門をインフィネオン・テクノロジース社(Infineon Technologies AG)として分離、独立させ、ドレスデン工場もインフィネオン社の傘下に入った。このInfineon Technologies Dresden社は設立以来30 億ユーロの投資を行い、現在は200ミリミリウエハーにより、カー・エレクトロニクス用などの半導体約200種類を製造している。従業員数は約2,000人。2000年代半ばに"Quimonda"社へと再編されたが、同社が倒産した後、2011年に再びInfineonに戻り、同社の最大の生産拠点となっている。2001年12月には世界ではじめ300mmウエハーの製造に成功するなど、高い技術力を誇っている。

一方、1995年12月には米国AMD社がやはりドレスデンでの新規工場Fab30の建設を決定、1999年にはIntelのPentiumに対抗するAthlon, Opteonなどのマイクロプロセサーの開発・製造を開始した。AMD社はさらに2003年秋、ドレスデン工場の 大幅拡張(第2工場Fab36の建設)を決定、2005年から300ミリウエハーによる製造を開始した。AMD社は半導体不況の中で2009年にアブダビのATIC社とともにGLOBALFOUNDRIES社を設立、ドレスデン工場はFab 1としてその傘下に入るとともに、AMDだけでなく、世界各国からの受注生産を行うファウンドリーに生まれ変わった。ドレスデン工場に対するこれまでの投資額は90億ドル、従業員数は3,700人で、世界でも最大、最新鋭の工場のひとつといわれる。

    ドレスデンのグローバル・ファウンドリーズ社工場
   <空港近くのGLOBAL FOUNDRIES社工場>

なお、GLOBALFOUNDRIES社は2012年からはATICの100%保有となっている。

ドレスデンにはこのほかX-FAB Dresden,、SAW COMPNENTS Dresdenといった半導体関連メーカーがある。

周辺産業としては、1995年から96年にかけて、ドレスデン近郊にあり、鉱山業の町として知られるフライベルク市で、ウエハーを製造するFreiberger Compound Materials社(FCM)がイスラエル企業によって設立されたほか、Wacker Siltronic社が純シリコンの生産を開始し、インフィネオンやAMDの半導体製造を支えた。フライベルクでは1994年からBayer Solar社(現Sola- World社)もソーラー・シリコン・ウエハーの製造を行っている。

サービスの分野では、東ドイツ時代にドレスデンで半導体開発をリードしたZMDは、ファブレスのZMDI AGとして、従業員350人で、自動車、医療機器などの分野で安全性、効率性などを重視したソルーション・サービスを提供している。

なお、2021年6月には自動車部品のBoschがやはり空港に近いドレスデン北部に新たな半導体製造工場を開設した。300㎜ウエハーをベースに、AI、Industrie 4.0の概念を最大限に利用した最新鋭の設備で、自動車用などの世界的半導体不足の中で対外存度を引き下げ、競争力を強化するものとして期待されている。2021年7月から電動工具用、9月からは自動車用の半導体を供給する。
   ドレスデンのインフィニオン社工場
    <やはり空港に近いInfineon社>

研究開発拠点として

ドレスデンは半導体関係の研究開発拠点としても重要で、2002年にAMDとトッパン・フォトマスクス社が合弁でAdvanced Mask Technology Center社(AMTC)を設立して、リトグラフフォトマスクの開発と試作を行っている。ほかにも、インテル、ボッシュ、アマゾンなども研究開発拠点を置いている。
研究開発活動を支えるのはドレスデン工科大学、フラウンホファー研究所、ライプニッツ研究所など多数の学術・研究機関である。


"Silicon Saxony"

ドレスデンではのように半導体メーカーの進出、投資に伴って、周辺でも関連企業の進出が続いた。また、近年は特にソーラーシステム関係企業や通信、ソフトウエア関係企業も数多く進出している。

また、近年は特にソーラーシステム関係企業や通信、ソフトウエア関係企業も数多く進出している。半導体メーカーや関連企業の進出については州政府や連邦政府による助成策も大きな要因であったが、旧東独地域でこのような先端産業が集積して発展してきたことは経済開発政策の大きな成果であり、他の地域の手本ともみなされている。ドレスデンおよびその近郊には半導体やその材料を含むマイクロ~ナノテクノロジー、ソフトウエア、アプリケーション、スマートシステム、エネルギーシステムなど製造、製作、研究開発、関連サービスなどかかわる企業、機関、大学などが300社が集積しており、それらが"Silicon Saxony"を構成して相互協力や欧州の主要半導体クラスターとの協力を推進している。Silicon Saxony傘下企業の従業員数は約2万人。


日本企業も早くから進出

日本からは、キャノンおよび東京エレクトロンが早くから進出し、半導体製造装置の供給・サービスを行っている。また、上記の凸版印刷が進出しているほか関連数社が事務所を置いている。また、三菱化工機が半導体製造関連設備メーカーのDAS社に、そして、長野計器が圧力センサー・メーカーのADZ Nagano社に資本参加して事業を展開している。

   -- ドレスデン情報ファイル 2014.10.01--
更新:2021.06.07