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2011年06月06日(月)
連邦政府、脱原子力、再生可能エネルギーの拡充などについて、関連法案を決定。

2011年06月09日(木)
連邦議会でエネルギー法案の審議開始。

2011年06月22日(水)
電力大手E-ONおよびRWEが共同で核燃料税を不当としてミュンヘン税務裁判所に提訴。
*核燃料税は、2010年に原発の稼働期間延長を決めた際、税収増を目的に導入され、2011年から徴収されることになっている。燃料1グラムあたり年間145ユーロで、政府は当初年間23億ユーロの税収を見込んでいたが、原発停止を早めたことから、13億ユーロに減少すると見られている。最初にその対象となったのがGundremmin B原子力発電所で、同発電所の事業会社はE-ONが75%、RWEが25%所有している。

2011年06月25日(土)
緑の党がベルリンで開催した党大会で、2022年までに脱原発を達成するとする政府案に賛成することを決定。
(緑の党はこれまで2017年までの脱原発を求めていたが、執行部が再検討の結果、2022年とする政府案に同意することを提案、賛成多数でこれに同意したもので、連邦議会で賛成するよう同党議員に勧奨することになった。)  (2011年06月26日)

2011年06月30日(木)
エネルギー転換関連法案が連邦議会を通過
2022年までに脱原子力を達成することを定める原子力法改正法案が与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)および自由民主党(FDP)のほか、野党の社会民主党(SPD)および緑の党(Gruene)による賛成多数で可決された。左派党は脱原子力を基本法(憲法)に定め、原子力への回帰を不可能なものとすることなどを求めて反対した。賛成513票、反対79票、棄権8票であった。停止中の原発8基の即時停止も確定することになった。
連邦議会ではこのほか、与党による賛成多数で再生可能エネルギー法(EEG)の改正、住宅のエネルギー効率改善のための助成の強化など、再生可能エネルギーの拡充、エネルギー効率の向上に関連する各種法案を可決。これらについては野党は反対した、
市町村における気候保護および海上風力発電促進関連法案も賛成多数で可決。
これらの法案はこの後、各州代表で構成される連邦参議院で審議され、7月8日に成立する見込みである。  (2011年07月01日)

2011年07月08日(金)
州の代表で構成される連邦参議院ですべての州が、2022年を期限とする原子力発電からの離脱を定めた原子力法の改正を決議。エネルギー転換にかかわるその他の6本関連法案も同日通過したが、住宅のエネルギー関連改修に対する税制面からの促進に関する法律案は、州の税収減に対する補填が予定されていないことを理由に、否決された。これについては今後連邦参議院もしくは連邦議会に調整委員会を設けて再調整が図られる見込み。
通過した法律は大統領の署名を得て発効する。 (審議された法案のリスト)
(2011年07月09日)

2011年08月03日(水)
連邦政府が「第6次エネルギー研究プログラム」を閣議決定。プログラムの名称は「環境を大切にし、信頼でき、コスト負担可能なエネルギー供給のための研究("Forschung für eine umweltschonende, zuverlässige und bezahlbare Energieversorgung")」。
連邦経済・技術省、連邦環境・自然保護・原子炉安全省、連邦食糧・農業・消費者保護省および連邦教育・研究省の4省共同の事業で、再生可能エネルギーへの転換の推進を念頭に、革新的なエネルギー技術の研究開発に対する連邦政府の助成措置の基本線と重点を定めたもの。
2011年から2014年までにプログラムの実施に充てられる予算は4省合わせて34億ユーロで、比較対象となる2006年から2009年までの期間と比べて75%の大幅増となる。各省予算の大部分は新設された「エネルギー・気候基金」にまとめられ、エネルギー転換に際して重要な分野に対して重点的に資金投入される。
重点分野は、再生可能エネルギー、エネルギー効率、エネルギー貯蔵、送電技術およびエネルギー供給への再生可能エネルギーの統合など。企業、大学、大学以外の研究機関などを対象とするプロジェクト毎の助成と研究開発機関毎の助成がある。
国際研究協力も拡大していく計画で、とくにEU域内の研究ネットワークの強化を重視している。
また、「エネルギー研究調整プラットフォーム」を拡充し、すべてのエネルギー関係研究活動の調整、連携の強化をめざす。
研究開発は第一義的には、成果を最も享受し、その技術の強みや弱点を最もよく知る民間企業の役割であり、政府の役割はイノベーションおよび技術的進歩のための環境条件を整え、教育および基礎研究に対して合目的的な投資を行うことであるとの認識に立って、国全体で役割分担をしながら効率的に研究開発を推進する。

2011年08月31日(水)
停止された8基の原発のうち1基を予備として残すことについて、連邦ネット・エージェンシーが不要との判断を示す。
政府は、2011年6月に原発8基の停止を決定した際、冬期の電力不足による産業界への影響を懸念したFDP(自由民主党)の要求で1基を予備とする余地を残し、その必要性を9月はじめまでに判断するよう連邦ネット・エージェンシーに求めていた。これに対して、ネット・エージェンシーが停止している一部の火力発電所を待機させれば、予備の原発は不要と判断したもので、8基の原発すべての停止と残りの原発の2022年までの段階的停止が最終的に決定することになる。
予備とする発電所の候補としてはヘッセン州にあるBiblis Bおよびバーデン・ビュルテンベルク州にあるPhilippsburug Iが挙がっていたが、連邦政府は予備として1基を維持するためには年間5,000万ユーロの経費を要し、その経費が最終的には消費者の負担になることなどから予備を維持することに否定的で、各州政府も反対していた。
連邦ネット・エージェンシーが調査の結果、予備原発に代わって待機可能と判断した停止中の発電所は、Mannheim大型石炭火力発電所ブロック3、Mainz-Wiesbaden2号発電所(ガスタービン)、ザールラント州Ensdorfの石炭火力発電所ブロックC、ミュンヘンのFreimann発電所およびOberrhein精油所の5箇所で、合計すると約1,009メガワットの出力がある。
バーデン・ビュルテンベルク州にあるMannheim 大型発電所に利用については3月に政権についた緑の党が予備の原子力発電所に代わるものとして同意している。
連邦ネット・エージェンシーはこのほかオーストリアにも約1,075メガワットの予備能力を確保できるとしている。
しかし、ネット・エージェンシーのKuth理事長は、冬の天候にもよるが、決して安心できるわけではなく、新型の火力発電所の建設の遅れなどによる地域的な電力不足が生じる懸念もあるとして、停止が予定されている石炭火力発電所の稼働継続などの対策も求めている。

2011年9月7日(水)
連邦交通、建設、都市開発省がベルリンに建設するモデル住宅「エレクトロモビリティ付きエネルギー・プラス・ハウス(Energie-Plus-Haus mit Elektromobilitaet)」の建設と同住宅の住人の募集を開始。
モデル住宅は建築技術と交通技術の統合を企図したもので、自家消費するエネルギーの2倍のエネルギーを発生し、自宅で発電した電力で高性能バッテリーや電気自動車にも充電するとともに、余剰電力は売却する計画。
モデル住宅は一戸建て、広さ130㎡、2階建て。1階に広い居間とキッチン、2階に寝室3室など。
2011年中に完成、2012年3月から応募した家族の中から1家族(夫婦と子供2人)が15カ月間実際に居住してテスト、技術の改善にも役立てる。
大学対象のコンペで、Sobek教授を中心とするシュトゥットガルト大学の建築関係研究所の設計が採用された。エネルギー効率が高いほか、再使用可能な建材を使用、解体が容易、家族構成の変化に柔軟に対応、各種システムの自動化され、手入れ、維持、管理が容易といった特徴もある。
2009年から行ってきたPlus-Energie-Hausプロジェクトにエレクトロモビリティ(電気自動車と充電システム)を追加して引き継ぐもので、同プロジェクトではコンテストでドルトムント工科大学が優勝、消費するよりも多くのエネルギーを生む移動可能なモデル住宅”Plus-Energie-Haus”を建設。このモデル住宅は2009年以来国内主要都市で巡回展示されとともに、省エネルギー建築に関する規則や助成制度、省エネルギー建築技術・資材、エネルギー関連機器や技術(ヒートポンプ、燃料電池、太陽電池等)に関する広報、情報提供、相談に使用されてきた。このモデル住宅については2011年07月18日、最終的な展示場をドルトムント市に決定、同市で常時展示されている。(2011.09.20)

2011年10月14日(木)
4大送電会社(Amprion, 50Hertz, Tennet und EnBW Transportnetze)が再生可能エネルギーの供給動向に基づき、2012年のEEG割増(再生可能エネルギー割増またはグリーンエネルギー割増)が3.592セント/kWhとなると発表。これまでは3.530セント/kWh で、1.8%弱の上昇にとどまることになる。
原子力発電所8基の停止にかかわらずのEEG割増の引き上げが小幅にとどまることで、レトゲン環境大臣は「再生可能エネルギーの普及目標の達成にも望ましいと歓迎。
環境省によれば、年間電力消費量3,500kWhの4人世帯で電気代は1カ月あたり18セントの上昇となる。(2011.10.15)

2011年12月20日(火)
エネルギー関係業界団体等で構成する「エネルギーバランス集計作業グループ」が2011年のエネルギー消費量(速報値)発表。それによると、同年の一次エネルギー総消費量は13,411ペタジュール(4億5,760万石炭換算トン)で、前年を4.8%下まわった。種類別では原子力が22.9%の大幅な減少となったほか、天然ガスも10.3%減少した。再生可能エネルギーは4.1%の増加で一次エネルギー消費全体に占める割合は前年の9.9%から10.8%に上昇した。
ドイツ政府はエネルギー消費を2020年までに2008年比で20%削減することを目標としている。2011年時点の達成率は約5.7%になる。2011年は冬の気候が例年と比べておだやかであったこともエネルギー消費の減少につながった。。

2012年01月01日(日)
再生可能エネルギーによる電力に「市場(マーケット)プレミアム制」を導入。
再生可能エネルギーよる発電の促進のため、従来は法律で再生可能エネルギー源毎に発電事業者に有利な電力価格を定める一方、送電事業に対してその価格ですべて買い取る義務を課し、一般の電力を上回る部分は電力価格に上乗せする形で最終消費者が負担する「買取方式」がとられてきた。
2012年1月1日からはこの買取制に加えて、市場プレミアム制が導入された。再生可能エネルギーによる電力を市場動向に左右されない固定価格制から需給によって価格が変動する電力市場に統合していくのが目的。再生可能エネルギーによる発電を行う事業者はこの制度を選択すると電力取引所において電力を直接販売することが可能になるとともに、販売した価格に応じて一定の奨励金(プレミアム)を受け取ることができる。プレミアムの額は1ヵ月毎に電力取引所における平均価格と買取制で定められている価格を基に算定され、変動する。
この制度を選択する場合は、供給量の過度な変動を避けるために、電力の供給量および供給時間の予測を提出しなければならず、見通しを誤ると反則金を課される。そうしたリスクや見通し作成のためのコストを補填するために「マネージメント・プレミアム」が支給される。「マネージメント・プレミアム」の額は電力供給の予測が難しい風力と太陽光は1kWあたり1.2セント、バイオマスや水力は0.3セントで、将来段階的に引き下げられる。
このほか、需給に合わせて出力を調整するバイオガス発電については規模に応じて「フレキシビリティ・プレミアム」が支給される。

2012年01月16日(月)
洋上風力パークの送電網接続加速作業グループ」がスタート。洋上風力パークを送電網に接続するに際しての障害や解決策について協議し、接続を早急に実現するのが目的。メンバーは洋上発電分野(送電事業者、洋上発電事業者、下請け業者)、保険分野の代表のほか、連邦経済省、連邦ネットワーク庁、連邦船舶航行・ハイドログラフィー局および沿岸諸州の代表。レースラー連邦経済大臣の呼びかけで設立された。

2012年02月01日(水)
エネルギー事業法規則改正法(Gesetz zur Neuregelung energiewirtschaftsrechtlicher Vorschriften)」発効。同法により、一般家庭の電力契約について、解約条件を含む各種項目の明示が義務づけられ、契約内容の確認、電力会社の変更などがこれまで以上に容易になる。たとえば、消費者から電力会社変更の申し出があった場合、電力会社は変更手続きを3週間以内で完了しなければならないなど。また、消費者からの苦情を受けた場合、電力事業者は4週間以内に回答しなければならない。改正法は地域別の独占体制にある送電事業者に対して全国的に調整のとれた送電体制を整えることを義務づける形となっており、事業は間の競争を促し、消費者の選択の幅を広げるのがねらいである。新築住宅など一部で義務化されているスマートメーターの普及の条件を整えることにもなる。

2012年03月29日(木)
再生可能エネルギー法関連法の改正法案が連邦議会を通過。主な内容は、太陽光電力のフィードイン対価(買取価格)の引き下げ、フィードイン対価の引き下げシステムの変更、太陽光電力の買取上限の設定。
 (1)太陽光による電力のフィードイン対価(買取価格)の引き下げ
2012年再生可能エネルギー法では太陽光による電力のフィードイン対価が13~15%引き下げられ、2012年6月1日からさらに15%引き下げられる予定であったが、引き下げ幅をさらに1~3セント拡大するとともに、前倒しして2012年4月1日から実施する。
*屋根上設置の10kWまでの小型設備:24.43セント/kWh → 19.50セント/kWh
*屋根上設置の10kW以上の大型設備:21.98セント/kWh → 16.501セント/kWh
*露地設置の大型設備:17.94セント/kWh → 13.50セント/kWh
ただし、決定以前から予定されていた設備は一定の条件の下で従前の金額を適用。
 [背景] ドイツでは太陽光発電設備の価格が急速に低下する一方、設備能力が2010年、2011年ともに7.5ギガワットと大幅に増加している。これは買取保証制度を通じて電力価格の上昇要因にもなることから、買取価格を引き下げ、設備の過度な増加を抑制することにしたもの。ドイツ政府は太陽光発電について、2020年の発電能力は52ギガワット程度が適正で、それに向けた年間増加量は2,500~3,000ギガワットが妥当とみている。
 (2)フィードイン対価決定方式の変更
従来から「浮動シーリング方式」により年ベースで算定されていたが月ベースの算定方式に変更。
太陽光発電技術の向上とコスト低下に合わせて、基本引き下げ幅を月1%(年11.4%)とする。月毎の減少幅は発電能力増加幅が目標を超えた場合、月2.8%を上限に、年間では増加幅が7,500メガワットを超えた場合は年29%を上限に引き上げられる。
なお、従来の浮動シーリング方式では発電能力の増加幅が小さくてもフィードイン・タリフの引き下げが行われることになっていたが、新たな方式では増加幅が極めて小さい場合は引き上下げがなく、逆に引き上げられることもあり得る。
 [背景] 引き下げを見越した大幅な駆け込み需要を抑制する必要が生じていた。
 (3)電力市場への統合のための新たなモデルを導入
固定価格による買取保証は小型設備については発電量の80%を上限とし、中型設備は90%を上限とする。それぞれ残りの10~20%は自家消費ないしは取引所で直接販売することができる。
 [背景]買取価格の引き下げの結果、設備保有者は自家消費した場合電気代がkWhあたり23セント節約でき、19.5セントで買取を受けるよりも有利になる。ドイツ政府は早ければ2017年には助成がなくとも成り立つ太陽光発電が生まれる可能性があるとみており、今回のモデル導入はそれに向けた一環。

2012年4月23日(月)
大手送電会社Amprionが画期的な高圧送電方式を開発
すでに原子力発電所の半分近くが停止され、2020年までにすべて停止されるドイツではバルト海や北部沿岸地帯での風力発電設備の建設が急ピッチで進んでいる。これに対して、それら北部の風力発電による電力を南部の電力消費地に送るための送電網大幅な拡充が不可欠で、そのための資金調達や新たな送電線の建設に反対する周辺住民との合意が大きな課題となっている。
こうした中で、フランクフルター・アルゲマイネ紙によると2012年4月23日、大手送電会社のひとつアンプリオンが従来の鉄塔や電線に手を加えるだけで従来の2倍の電力を輸送する方式を開発したと発表。新たな方式は「ウルトラネット」と名付けられ、すでに商標登録の申請も行われている。これによって新たに建設が必要な高圧送電線(Trasse)が少なくて済むことになるとされ、ドルトムント工科大学高電圧教室との協力で実験も済ませている。交流と直流を1本の送電線(Trasse)で送ることが可能で、障害は一切生じないほか、ロスも極めて少ない。低圧での配電に際してはコンバーターを用いて400キロボルトの直流アウトバーンから変換する必要がある。コンバーターはシーメンス、ABB、Arebaなどが製造しているものを利用できる。

2012年05月24日(木)
「コージェネ法」改正を連邦議会で可決。
対価(買取価格)をkWあたり0.3セント引き上げるほか、2013年からの新規設備の導入、既存設備の改善を助成する。一般家庭も対象。発電に占めるコージェネの割合は現在15%であるが、これを2020年までに25%に引き上げるのが目標。蓄熱・蓄冷設備の設置も助成対象とし、風力発電や太陽光発電の変動を補う。助成は電力料金への割増金でまかなわれ、その額は7億5,000万ユーロが限度。
この改正に連邦参議院の同意は不要。

2012年05月30日(水)
高圧送電線建設計画を発表

高圧送電網を運営する4社が送電網の拡充計画を発表。それによると、2022年までに原子力発電を廃止し、再生可能エネルギーなどへの転換を行うに伴って新たに設置が必要となる高圧送電線(電力アウトバーン)は総延長で3,800km、そのほか変動の大きい再生可能エネルギーによる電力に対応するために既存の高圧送電網4,400kmの改修が必要とされている。
新設を計画する主な路線は北部のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、ニーダーザクセン州および中部のザクセン・アンハルト州からドイツを縦断して南部のバイエルン州、バーデンビュルテンベルク州方面へ向かうもので、いわゆる電力アウトバーン4路線である。3,800kmのうち、2,100kmについては、ドイツとしては初めてとなる本格的なHGÜ(高圧直流送電)技術が投入される。
総費用は約200億ユーロと見積もられており、電力料金に反映されていくことになる。

-新設される主要路線-
(1)Emden (ニーダーザクセン州) → Osterath (ノルトライン・ヴェストファーレン州) → Philippsburg(バーデンビュルテンベルク州)
(2)Wehrendorf (ニーダーザクセン州) →Urberach (ヘッセン州)
(3)Brunsbüttel (シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州) → Großgartach (バーデンビュルテンベルク州)
(4) Kaltenkirchen (シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州) → Grafenrheinfeld (バイエルン州).
(5)Lauchstädt (ザクセン・アンハルト州) → Meitingen (バイエルン州).
(3)と(4)は大部分が並走

注)周辺住民等は計画案に対して6週間以内に異議を申し立てることができるが、通過する経路によっては環境への影響を懸念する大きな反対運動が起きる可能性もあるとみられている。

2012年06月14日(木)
ノルウェーとの間の海底送電線敷設交渉で進展

6月14日付けフランクフルター・アルゲマイネ紙(インターネット版)によると、ドイツ連邦経済省Kapferer次官がノルウェーの国有送電会社Statnett SFに対して両国を結ぶ送電線の敷設に復興金融公庫(KfW)による資金協力を実施する旨確認した。
ノルウェーが持つ膨大な水力資源の活用についてはドイツ北部の送電網をカバーするTennetとStatnettが両国間に約600kmの海中高圧直流送電線を2本設置する計画で数年前から交渉を行ってきた。うち1本はNordLinkと称し、能力は大型原発1基分に相当する1,400メガワットで、連邦経済省は早ければ2018年には完成することを期待している。
ドイツでは再生可能エネルギーによる電力が増加するに伴って供給される電力が大きく変動するようになっており、それを補い、安定供給を確保するためにに必要な従来型発電設備(ガス・石炭など)の建設も遅れ、大きな問題となってきている。したがって、ノルウェーの水力発電を利用できれば安定したベース電力の供給で一歩前進することができる。また、ドイツとしては風力や太陽光による発電に余剰が生じれば、ノルウェーに送って揚水発電に利用するという道も開ける。
なお、ノルウェーとオランダおよびデンマークとの間にはすでに海底送電線が敷設されている。

2012年6月27日(水)
太陽光発電に対する買取価格の引き下げ、固定価格による買い取りの打ち切りなどについて、連邦議会と連邦参議院が合意。

太陽光発電の急増とそれによる電力価格の上昇を抑制するため、買取価格の引下げや今後の引下げ方式を定める法案(2012年3月29日の項参照)は2012年3 月29日に連邦議会を通過し、連邦参議院に回された。しかし、連邦参議院は関連産業への影響などを考慮してこれを否決。そのため、同法案は両院の調整委員会にかけられていたが、6月29日に妥協案で合意が成立した。改正法案は改めて両院の同意を得た上で、4月1日に遡及して発効する。
両院の調停委員会における修正では買取価格を定める出力規模別のクラスについて、中規模の10kW以上40kWまでの新たなクラスが設けられたほか、将来的にすべての太陽光発電設備を合わせた出力が52GWに達した時点で固定価格による買取を終了することなどが決まった。
日本ではようやく再生可能エネルギーの新たな買取制度がスタートするが、ドイツのエネルギー政策は早くも太陽光発電の補助打ち切りを視野に入れた。
新制度の主な内容
①「屋根上中規模クラス(10~40kW)」を設けて新たな買取価格を設定するとともに、2012年7月1日の実施が見込まれていた買取価格の15%引き下げを前倒し、さらに1~2セントを上乗せして、2012年4月1日移行に稼働する設備を対象に買取価格の特別引き下げを実施する。「転用地」と「露地」は露地に一本化する。
②固定価格による買取の対象となる出力の上限を10MWまでとする。大型設備を10MW以下の複数の設備に分割することについては、24ヵ月以内に同一市町村内の2km以内の地域に設置された設備は同一の設備と見なす。
10kW以上1,000kWまでの設備は買取の対象を年間発電量の90%までとし、残りは自家消費、直接販売、取引所での販売を通じた電力市場への組み入れを図る。ただし、実際の適用は2014年1月1日からとする。10kWまでの小型設備、10MWまでの露地設備およびその他の設備は100%買取対象とする。
表 2012年4月1日以降に稼働する太陽光発電の買取制度の概要
(買取価格単位:セント/kWh)
形 態 屋根上設備... 露地設備
出 力 10kWまで 40kWまで 1MWまで 10MWまで 10MWまで
買取量 100% 90% 90% 100% 100%
買取価格 2012.04.01~稼働 19.50 18.50 16.50 13.50 13.50
. 以降毎月1%引下げ...
2012.10.01~稼働 18.36 17.42 15.53 12.74 12.74
2012.11.01~稼働 2012年7月、8月および9月の実績による....
(2012年10月31日までに官報で告示)  
注1)屋根上設備には従来どおり規模段階ごとに買取価格を適用する。すなわち、一段階以
  上にまたがる規模の設備には適用される買取価格を段階ごと案分する。
注2)2012年4月1日からの特別引き下げにはいくつかの経過規定がある。
資料:連邦環境省資料など
④発電能力の拡大目標を年間2.5~3.5MWの範囲内に維持しつつ、発電能力が全体で52ギガワットに達した時点で固定価格による買い取りを終了する。ただし、その後設置される設備に対しても優先買取を保証する。
⑤買取価格は2012年5月から10月までは毎月初に前月比で1%ずつ引下げる。11月以降は設備の増設動向に基づいて引下げ幅を決定し、官報で公示する。具体的には、2012年11月の引下げ幅は同年7月から9月までの設備能力増加量を年間に換算した値に基づいて算出する。その後は年間の増加量算出のベースとする月数が毎月1ヵ月ずつ増加し、2013年8月にはじめて12ヵ月(2012年7月~2013年6月)となる。その後は毎月12ヵ月の実績がベースとなる。
この新たな「浮動シーリング方式」では増設が年間2,500~3,500MWの目標範囲を大幅に下回った場合は引き上げが実施されないことや、買取価格が引き上げられることもあり得る。
(注:たとえば、年間増加量が3,500MW以上4,500MWと算定された場合、年間の引下げ幅は約15%、月あたりの引下げ幅は1.4%、4,500MW以上5,500MWまでの場合は年間約19%、月あたり引下げ幅は1.8%、1,000MWに満たない場合はつきあたり0.5%の引き上げなど。)

調整委員会ではそのほか、太陽光発電の買取価格引き下げの影響を受ける太陽光関連産業を念頭に、連邦による太陽光発電および蓄電に関する研究開発の推進を強化し、二酸化炭素の試験的地下貯蔵(CCS=Carbon Captute and Storage)量を年間130万トン、合計400万トン(原案は800万トン)まで認めることなどで合意。CCSについては事故の予防、損害などに対する事業者の責任期間を40年間(原案は30年間)とすることとなった。

いずれも連邦議会および連邦参議院の承認を経て正式決定となる。

背景
ドイツでは太陽光発電設備の調達コストが低下する一方、高い買取価格が設定されていることから、このところ新たな設備が年間7ギガワットのペースで急速に増加している。そのため現在の発電能力は約28ギガワットと、全発電能力の20%以上に達している。しかし、太陽光発電は天気に左右される度合いが大きく、発電能力が増加するに伴って電力供給全体に不安定さが増し、送電網への負担も高まっている。実際の発電量でみると太陽光は全体の4%を占めるにすぎないが、補助額は年間70億ユーロに達し、電力料金の上昇要因にもなっている。大量光発電に対する補助額は設備能力の増加に伴って毎年引き下げられてきたが、今回はここ数年の発電能力の伸びが大幅であったため、引き下げ幅も大幅になった。
太陽光発電に対する補助(高価格での買取)は設備能力が52ギガワットに達した時点で打ち切られることになったが、ここ1~2年の半分の増加ペースでいっても2016年にはそのレベルに達するとみられている。52ギガワットという能力は2010年時点のドイツの全発電能力170ギガワットに対比して見ると約30%に相当する。ただし、補助金は設置後20年間にわたって供与されるので、最終時点で決まった補助金は2036年頃まで供与されることになる。一方で、太陽光発電や蓄電に関する技術開発を推進し、将来的には固定価格で買い取らなくても、電力市場で他の電力に伍していけるようにすることをめざしている。
一方、太陽光発電の大幅な拡大が抑制されることによって関連産業が影響を受けることから、研究開発の支援などを強化して、競争力の維持が図られることになっている。 (2012.06.28、修正2012.08.06)

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