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ドレスデン情報ファイル

ドイツの環境・エネルギー政策

電力料金の構成と推移

1. 概 況
 ドイツは2000年の再生可能エネルギー法によって送電会社に対して太陽光や風力による電力を一般電力よりも高い価格で20年間にわたって買い取ることを義務づけ、再生可能エネルギーによる発電を急速に拡大させてきた。買取価格と一般電力の差額は再エネ付加金として電力消費者に転嫁されるため、再生可能エネルギーによる電力が増加するに伴って、電力料金が上昇してきた。
 しかし、買取価格は段階的に引き下げられてきており、電力料金に対する上昇圧力は今後弱まってくるとみられている、加えて、政府は2021年からガソリンや暖房油に炭素税を課す見返りに再エネ付加金が1kWhあたり6.5セントを超えないよう、一部を国庫負担することを決定している。
 2022年は前年からの大幅なエネルギー価格の上昇を背景に、再エネ賦課金が低下したが、発電コストはそれを大きく上回って上場した。
 新政権は2023年の実施を予定していた再エネ付加金の廃止を2022年中にも実施することを検討している。
 電力市場が自由化されており、料金の構成の透明性が高い。

2. 家庭用電力料金



注1)3人家族、年間消費量3,500kWhの場合の平均。
注2)2000年および2005年の「調達・販売費」は「送電費」を含む。
注3)2018年までは「洋上風力保証割増」。2015年および2017の洋上風力保証割増はマイナス調整(-0.051セントおよび-0.028セント)。
注4)2020年は付加価値税率が7月から12月まで16%に引き下げられたが、年間を通して19%で算出。
注5)2022年は1月時点の予測。
データ出所:ドイツ・エネルギー・水道事業連盟(BDEW)、「2022年1月 電力料金分析-家庭用および産業用」(2022年1月27日)


電力料金の構成要素
家庭用電力料金に占める公租公課の割合は50%を超え、2021年も51%を占める。
電力料金を構成する要素は次のとおり。
付加価値税(消費税)はすべての項目を対象にに賦課され、再生可能エネルギー付加金などが上昇すればその分増加する。税率は一般の商品と同じ19%。
電力税は環境税の一種。1999年に導入され、2003年から1kWhあたり2.05セント。再生可能エネルギーによる電力には課税されない。連邦税で、税収(2019年:約70億ユーロ)の約90%は年金会計に組み入れられる。電力集約型製造業等に対する軽減措置あり。
再エネ付加金は再生可能エネルギーによる電力を送電会社が買い取る価格とそれを電力取引所で販売する価格の差額で、消費者に転嫁されるもの。高価格で買い取る再生可能エネルギー電力が増えるに伴って上昇してきた。電力多消費型産業には免除・軽減制度がある。
送電料§19割増:大口需要家には送電網使用料の減免制度があり、減免された分をそれ以外の企業や一般消費者に転嫁するもの。年間電力消費時間が7,000時間以上(1日24時間、292日間)で、1,000万kWh以上の電力を消費する企業は送電料を免除される。それに対して、免除対象以外の一般企業、家庭などに対して「送電料割増」が新たに導入された。どの電力会社と契約しているかは関係なく、電力消費量に応じて課される。2011年に導入されたが、大口需要家に対する減免についてはEUの補助金規定との整合性の点でも調査中。
洋上ネット割増:2018年までは「海上風力保証割増」。洋上風力パークからの電力を陸上・内陸へ送電するための送電網の建設が遅れたり、送電が長時間にわたって中断したりした際に送電事業者が海上風力パークの運営事業者に対して支払う補償金。大部分が最終消費者に転嫁される。
コージェネ促進割増はEEG割増と同様にコージェネ助成費用を電力価格に上乗せするもの。
土地利用料は送配電のための道路等使用料としてエネルギー事業法に基づいて市町村が課す。
緊急時遮断補償割増(§18 AbLaV)は緊急時に大口需要家が電力消費を遮断することに対して送電事業者が支払う補償金を電力消費者全体にに転嫁するもの。2014年1月1日から新たに導入。2014年家庭用電力については0.009セント/kWh
発電・送電・販売費:表1では、「調達(発電)・販売費」と「送電費」に分けている。

3. 産業用電力料金


注1)年間消費量が16万~2,000万kWhの場合の平均。
注2)§19割増は2012年から。海上風力保証割増は2013年から。
注3)付加価値税(消費税)は含まない。(最終的には製品価格等に含めて消費者に転嫁される。)
注4)電力多消費型の企業はEEG割増を免除される。
データ出所:ドイツ・エネルギー・水道事業連盟(BDEW)、「2021年1月 電力料金分析-家庭用および産業用」(2021年1月28日)
    
4. 再生可能エネルギー付加金の推移

 再生可能エネルギー付加金(EEG-Umlage)の額は送電会社が毎年10月15日までにグリーン電力の買い取り額と販売額の差に基づいて翌年分を算出して、公表する。翌年に過不足が生じた場合は次の年に調整する。
 ここ数年は買取価格の抑制策で付加金の上昇圧力が低下してきているほか、2021年からは自動車燃料や暖房油に対する炭素税課税の見返りとして国が一部を肩代わりすることによって付加金の上限を1kW あたり6.5セントとすることになっている。
 ガスなど国際エネルギー価格の大幅な上昇を背景に、2022年中にも付加金制度が廃止される可能性がある、
 

データ出所:連邦ネット庁



5. EU諸国の家庭用電気料金

 ドイツの電力料金はEU諸国の中でも最も高いが、諸税を除いた実質では平均をやや上回る水準にある。


注)一部の国は2019年の料金。オランダは税の還付があった。
データ出所:Eurostat, Statistics Explained "Electricity price statistics"


参考: 日本とドイツの電力料金

 ドイツでは発電と送電が完全に分離されていて、電力は取引市場(EEX)で自由に取引されている。一方、送電は4地域に分割され、それぞれ公正取引当局(ネット庁)の厳しい監視下にある。
 そうした発・送電コストに対して各種の賦課金や税金が所定の率で課されており、電力料金の構成がわかりやすく、透明性が高い。これは消費者の受容性を高める要因にもなっているといえる。
 これに対して、日本は電力会社に支払われる発・送電部分の割合が高く、ドイツを大きく上回る形になっている。
注1)日本は2020年の年間消費量3,564kWhで算出。。
注2)ドイツは図1の2020年の電力料金に基づく。「電力」は調達・販売費・送電料の合計。「再エネ賦課金等等」は各種賦課金を含む。「消費税等」は付加価値税と電力税の合計。



更新:2021.02.09、2022.02.11