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ドレスデン情報ファイル

ドイツの環境・エネルギー政策

                

ドイツの電力輸出入の動向


1.概 況

 
 ドイツはとくに2011年以降、法律によって具体的な目標や方法を定めて脱原発と脱石炭を進める一方で、再生可能エネルギーの拡大やエネルギー効率の向上に重点を置いた「エネルギー転換」を推進している。
 その結果、電力消費が減少をたどるとともに、発電に占める化石燃料の割合が低下し、再生可能エネルギーによる電力が全体の40%あまりにまで拡大した。 そうした中で、ドイツは強い電力供給力と価格競争力を維持し、エネルギー転換以降は周辺国との電力取引において輸出が輸入を大きく上回るようになった。輸出と輸入の差である出超幅は脱原発の進展や風力・太陽光発電の拡充テンポの低下などを背景に2018年あたりから縮小傾向に転じた。
 2022年6月にはロシアからの天然ガス供給が停止したが、風力発電が好調であったことや休止中の石炭発電所を稼働させたこともあって、7月までの電力輸出入は前年とほぼ同様に推移している。しかし、冬季の需要拡大やフランスの電力不足に備えて、年末に閉鎖を予定されていた3基の原子力発電所のうち、南部の2基を2023年春まで稼働を継続させることが検討されている。
 統計データ出所:連邦統計庁 "GENESIS ONLINE"


2.季節的変動

 通常、ドイツの夏はしのぎやすく、冷房を使う家庭がほとんどないことなどから、夏の間は電力需要が低下する。このため、需要が増加する冬期に備えて、夏の間に点検整備に入る発電所が多く、基本的な電力供給が低下することから、周辺国からの輸入が増加する傾向にある。電力の需要が増加する冬は発電所の基本的な電力供給力が高められるが、暖房は天然ガスや暖房油が中心で、夜間や休日には余力が生じるため、輸出が増加する傾向がある。(フランスでは原子力を推進する過程で暖房に電力が多く用いられるようになった。)
 しかし、下のグラフのとおり、近年は輸出入ともに季節による変動が少なくなり、夏場は入超になる系統がある。











     統計データ出所:連邦統計庁 "GENESIS ONLINE"



3. 2022年の動向

 
2022年は2月を中心に春の気候が例年よりも暖かかったことなどから電力需要が低下する一方、風力発電が好調であった。このため、輸出入は2月を除いて例年と同様に推移したが、夏に入ると気温が上昇し、太陽光発電が大幅に増加したほか、ロシアからのガス供給ストップに備えた石炭・褐炭発電が増加し、出超幅が例年よりも拡大した。
 この結果、2022年は9月までの実績で前年同期の2倍の出超幅を記録している。


  統計データ出所:連邦統計庁 "GENESIS ONLINE


4.相手国別輸出入

   連邦統計庁によると、周辺国との輸出入は下のグラフのとおりで、フランスおよびデンマークに対して入超、オランダ、スイスオーストリア、ポーランドなどに対して出超となっている。この3年ほどは対チェコおよびデンマークで輸出が増加し、輸入が減少している。全体としては輸出が輸入を大きく上回っている。
 ただし、貿易統計では国境を接する国ないしは送電線で直接結ばれている国との間を往来する電力が把握されのみで、ドイツが隣国を経由して第3国と行う取引やドイツを経由する外国間の取引など、複雑な流れは明示されない。
 ドイツエネルギー・水道連盟(BDEW)によると、オランダはガス発電が多く、電力の価格が高いため、ドイツからの輸入が多いが、ドイツからの輸入の半分弱はさらにベルギーや英国へ輸出されている。また、スイス、オーストリア向けに輸出された電力の一部は、電力の輸入依存度が高いイタリアへ流れている。その際、オーストリア経由の一部はさらにスロベニアを経由してイタリアへ流れる計算になる。なお、ドイツはスイス、オーストリアに対して、揚水発電の復水用電力などを供給しているが、夏は両国からの輸入が増えるとの指摘もある。ドイツは両国に対するフランスおよびチェコのからの電力供給の経由地にもなっている。
 物理的取引量ではフランスからの輸入がが多いが、ドイツのエネルギー研究機関Agoraによると、取引金額でみるとドイツはフランスに対して大幅な出超となっている。
 なお、オーストリアとドイツは共通価格地域と形成している。

ドイツの相手国別電力輸出入
   統計データ出所:連邦統計庁 "GENESIS ONLINE"

5.ヨーロッパ電力系統連結システムとドイツの輸出入

 EUは電力についても域内市場の統合を進めており、現在は19か国の電力卸売市場が相互に結ばれている。売り手と買い手は翌日物を中心に実質的にどの国ともデジタルシステムを用いた入札を通じて自由に取引することができる。取引される電力は各国国境に設けられた国境接続線を通じて国と国の間を縦横に流れることになる。それぞれ翌日に最も有利な価格を提示できる発電事業者から国内あるいは周辺国の電力供給事業者へと流れる。余剰電力が生じるような場合は供給側が買い手側お金を払って引き取ってもらうこともある
 電力の「輸出入統計」はそうした形で国境を越えて流出ないし流入する電力を把握して表示するものである。国単位でみて供給力があり、低価格で供給できる国は輸出が多くなる。
 今後、再生可能エネルギーが拡大するに伴って、気候条件などの点で有利とはいえないドイツからの輸出は減少する可能性もあるが、広域市場を形成することによって全体として低コストで安定した電力供給を行っていくのがヨーロッパ域内市場のねらいである。



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  更新:2022.10.02
2022.11.20

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